一瞬、一瞬を必死に、歩いてきた道。思えば、今は山の彼方へと、
風のように、通り過ぎてしまった、私だけの人生よ。
曇天に、やっと咲いた、小さな花、傷つき、しおれ、涙はつゆのごとし。
時には、泣きながら下を向き、また、走り続けて息を切らし、
嵐の日も、雪の日も、耐えて、忍んで休みなく。
頂上は、長く遠くに 見えたのに、近づくと なんと 短き人の世よ。
ある日 気が付き 立ち止り。
細い記憶をたよりに、ふり返り、またふり返る。
夢まぼろしの乙女の姿、哀れや、山の彼方へ、粉じんのごとし。
遠いいにしえの、 ありし日々が 、時に心に沁みて、懐かしく、
また、まぶたに あつく よみがえる。幼き日々に愛した花々、
離れ離れに過ぎし、60年の年月よ。再び会えた喜びに、
流れる涙は、キラキラ、朝露のごとし。
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